いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「お前に仕事押し付けてきた女が、後からわざわざデータ書き換えて営業に渡したわけだろ? しかも俺も、部長も、いない時狙って」

一字一句、言い聞かせるように区切って、聞こえてくる声。

「それが陰湿じゃないとか、んじゃ逆にさ、何があればお前の中で陰湿になるの?」

その言葉を全て頭の中で反芻させたあと。

次は真衣香がポカンとする番だ。

「……あ、え? お、女って、小野原さん? データ書き換えてって……、え!?」


疎ましく思われているとは思っていた。
坪井に近付く真衣香に敵意を抱いてることは明白だった。


けれど、だからと言って。
会社の書類をわざと間違えたものに書き換えて、真衣香を陥れようとしたというのか?

「そんな、そこまで……」

「お前それ本気? 人が良過ぎない? とっくに気付いてて、それでも言い出せないで怒られてんのかと思ってたけど。 うちの部長に」

「な、な、何で」

動揺からイスを勢いよく倒しながら真衣香は立ち上がった。
しかし坪井が手首を掴んだまま離してくれていないので、その場を動くことはできない。

「あー、待って! ちょっとビックリしてさ。 言い方悪かったよね、ごめんな。 座ってよ」

声のトーンが、急にゆっくりと優しいものに変化した。
恐らく、動揺する真衣香を意識してそうしてくれているんだろう。

気遣いに頷くようにして、大人しくもう一度席についた。

「うん……」

「立花ってさ、自分に向けられてる感情は、全部まっすぐ真正面から届いてるって、そう思う?」

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