いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



「好み……」

「あと、お前とのこと知ったら諦めるかな、とか。迂闊だったな、ほんとごめんな」

坪井は何やら話を続けているが、真衣香の中では即答されたセリフがグルグルと回り続けている。

「坪井くんの、好みって」

「今更そこ気にしてんの? お前もしかして俺が女なら誰でも見境なくオッケーな男だと思ってる?」

先程の駄々をこねている幼い子供のような仕草から一点、意地悪に真衣香を試すようにして楽しそうな声で聞いてくる。
いや違う。 もう既に楽しんでいる声だ。

からかおうとしているのだとこれまでの数度の経験から瞬時に悟り、威嚇するように答えた。

「……だ、だって私に付き合おうとか可愛いとか言うから!」

「うん、だってお前可愛いじゃん」

(また、即答された……)

思わず会話が終了しそうな破壊力にも負けじと真衣香は力んで更に続けて言った。

「わ……、私がそうなら他の大体の女の子たちが坪井くんにとってそうなっちゃうよ!?」

そんな真衣香を見つめることを、まるで楽しんでいるかのように。
膝に肘を置き、頬杖をしながらニコニコと言葉を重ねる。

「はは、そうなっちゃうってどうなるんだよ。 お前マジで可愛いって。 俺何回も言ってるじゃん、自己評価おかしいって」

こんなことを言う時に限って坪井は曖昧な表現を使わない。真っ直ぐに真衣香を見据えて言う。
そして、そんな発言を繰り返す坪井に真衣香は弱いのだ。

可愛いだなんて言い慣れてるかもしれない坪井に対して、真衣香はもちろん慣れてなどいないから。
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