いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました
営業部はビルの大きな来客口から直結しているため裏口を目指して歩いていた真衣香。
ノックをせずとも少し開いてくれていた裏口のドアノブを、片手で段ボールを担ぎながら捻ろうとした。
けれどそれよりも前にドアが開かれた。
「……あ」
「あ」
フロアの外と中で、顔を見合わせた、相手。
「小野原さん、おはようございます」
「おはよう」
挨拶の後、会話が続かず沈黙が流れた。
「あ。それ発注してた社員証ケース?」
と、その沈黙を早く終わらせたいのか慌てたように早口で真衣香に言った小野原。
それには答えず真衣香は何かを口にしたくて沈黙するのだけれど、悔しいことに言葉がまとまらない。
(私が、突っ込まれやすい人間だから。こんな事になったんだよね。もっとしっかりしてればされなかったことなんだ)
八木の言葉や、今朝の坪井との時間を思い返して。
けれどいざ目の前に迫ると怯む自分がいた。
そんな真衣香を前に苛立った雰囲気に変化した小野原が言う。
「立花さん、私たち今からミーティングがあるんだけど。言いたいことがあるなら早く言ってくれないかな」
「す、すみません……あの」
「そ、ミーティングっすね。でも急がなくても、ちょうどこいつの件で小野原さんに聞きたいとあったんで」
真衣香の声と、重なった陽気な声。
小野原の背後から顔を出した坪井が手を伸ばして真衣香の荷物を取った。