いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました


「わ。結構重くない? お前これ片手で担いでたの?」

「え?あ、うん、バケツとか水入れたらもっと重いし」

「ははは、なるほどね、バケツ重いよね」

坪井が笑い声を上げながら真衣香と小野原に背を向け歩き出そうとした。
その背中を引き止めるように小野原が控えめな声で問う。

「坪井くん、まって。ミーティングの前に話って、なに?」

「え? またまた〜、小野原さん心当たりあるんでしょ? だから立花と長話、したくないくせに」

二人のやりとりを聞いていると、何となくだが坪井の声に一定の冷たさを感じてしまう。
これ以上この場にいては本当にただの邪魔者だと、真衣香が二人の会話を邪魔しないように小声で声をかけた。

「じゃあ私はこれで戻りますね……」

「あ、うん、ごめんね立花。 今朝のこともあるし仕事落ち着いたらメールするからさ」

「わかった、待ってるね」

坪井が荷物を持たない方の手で、ひらひらと真衣香に手を振った。
それに胸の辺りまで遠慮気味に手を上げ振り返す。
ニカっと歯を見せて笑った顔が何やらとてもスッキリとして見えた。

その表情に安心し総務課に戻ろうとエレベーターに向かう。
少し歩いて、ふと自分が手ぶらなことに気がついた。

(あ! 営業部のハンコもらい忘れてるじゃん……)


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