いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



明るい声で笑みを浮かべる陽気な同期。
顔だっていいから、いつも誰かに囲まれていて。
優しく朗らかな、人気者。

そのイメージだけが、数日前までの真衣香にとっての坪井だ。
そこから様々な表情を知り、極め付けは、今この瞬間かもしれない。

「ま、俺的には万々歳っすよ。でも嫌ですよね? プライドへし折られて、便利屋だなんだって見下されてさ、耐えられないでしょ、小野原さんも森野も」

「待ってよ、ちょっとさ、落ち着いて」

「待ちませんよ、ねえわかります? 無能な人間作り上げて安心しときたいんでしょ。効率悪い上に滑稽ですね、高柳部長がめちゃくちゃ嫌いなタイプ」

口を挟ませない勢いで糾弾する坪井の声が一層低く這うようにして、囁くように、けれどハッキリと言葉を付け加える。

「だったら、都合の良い無能な人間ってあいつじゃなくても、その役小野原さんでもいーんすよね」


それが真衣香を庇う意思を持って、その上での言葉なのだとわかって。
それでも。これ以上の言葉は何の解決にもならないどころか……

(私が坪井くんの隣にいるに相応しくないから、坪井くんはこうして誰かを傷つける言葉を発してしまってる)

坪井の持つ彼なりの正義感をこんな形で使わせてしまってはダメなんだ。
その考えにたどり着いた真衣香は、無意識に声を発していた。
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