いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

「坪井くん、ダメだよ」

突然聞こえた声の方へ振り返った形の坪井と目が合った。
真衣香と認識したからか、徐々に大きく見開かれてゆく瞳が驚きを伝える。

「え……」

ポカンとした声の後、真衣香の目の前まで駆け寄る。

「え、マジ? どーしたの、何で? 聞いてたの立花」

「……ご、ごめん、忘れ物して」

「忘れ物……って、あ。 もしかしてこれ?」

坪井がデスクの上に置かれたダンボールから受取書を取り出した。
それを真衣香に差し出す。 いつも通りの朗らかな笑顔で。

「あ、ありがと……」

「ん。 で? ダメって何? どうしたの?」

受け取り際に耳元で囁かれた声。
渡そうとしてくれていた用紙は、坪井が指先に力を込めている為ピンと張りつめたままだ。

はぐらかしてしまおうかとも思った。 なぜなら、坪井の声に少し刺を感じたから。

けれど、それでは何の為にこの場で声を発したというのか。

少しカサついた唇をひと舐めして真衣香は口を開く。

「だ、誰も口を挟めない勢いで話しちゃダメだよ、そんなのミーティングじゃないしハタから見たら坪井くんが一方的に責め立ててるように見えるよ」

「は?」

真衣香にしては早口で言い切ると、坪井が短く疑問を返す。
声が明らかに苛立っている。

(ど、ど、どうしよう……。怒らせてる)
< 96 / 493 >

この作品をシェア

pagetop