いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



坪井の肩越しに、正面に座っていた小野原と目が合った。
徐々に赤くなっていく頬に怒りや羞恥を感じていると。

ガタン、と激しくパイプ椅子を倒して小野原は弾かれたように立ち上がった。

「あ! お、小野原さん!」

そのまま素早く歩き出した小野原は真衣香の横を通り過ぎる瞬間、刺すような視線でこちらを睨む。
そして早足で通り過ぎる、真衣香はその背中を追いかけた。

「小野原さん、ま、待ってください」

坪井に軽く会釈をし真衣香も早足で後ろに続くが、小野原は足を早めるばかりだ。

ずんずんと早足で営業課を出て廊下を歩く。

しつこく追いかけてくる真衣香に我慢ならなくなったのだろう。
立ち止まった小野原は振り返り、はぁ……。と耳を澄ませずともハッキリと聞こえる大きな溜息で語尾を強くして言った。

「何なの、あの場でもっと坪井くん味方につければよかったじゃん。こんなふうに私追いかけて、わざわざ彼氏に点数稼ぎなんてしなくてもさ」

「点数稼ぎなんて、そんな、そんなことしても意味ないです」

真衣香が答えると小野原は振り返った。
わなわなと肩を震わせて睨みつける。

「だから何いい子ぶってんの!?」

大きくキン、と響く声。
小野原に抱いていた美人で忙しない営業課でも頼られる美人で落ち着いた先輩事務員。 

そんなイメージが、彼女のほんの一面だったことを知る。

「い、いい子って……、その、坪井くんは別に私の味方というわけではないんです」

真衣香が返すと更に苛立った様子で小野原が大きな声を出した。


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