いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました



「だから何!? いいかげんハッキリ言ったら? 嫌がらせ無駄でしたねって、馬鹿ですねって思ってること言えばいいじゃない」

大きく怒りを含んだ声に真衣香はわかりやすく身も心も萎縮してまい、つい視線を逸らす。
けれどそんな自分を戒めるように。
思い返される声や表情。

『情けない』と自嘲するように言った坪井の。
『言わせないようにするんだよ』と言った八木の。

その声は全て、真衣香自身や仕事への姿勢、それらに繋がっていて。
それぞれの言葉を生んだ。
ならば真衣香は今ここで何をしなければならないのか?
小野原の気迫に恐れをなして下を向くことなのだろうか?
坪井を頼ってしがみつくことだろうか?

(……だから何回も思ってるよ、違うって。思うだけじゃダメに決まってる)

ギュッと手を握りしめた。

(坪井くんと関わったほんの少しの間に、自信つけるための勇気たくさんもらったんだからしっかりしなきゃ)

その坪井の、マイナスになるだけの存在になんてなりたくない。

中指に食い込んだ親指の爪、その痛みがまるで背中を押してくれるみたいだ。

さあ、息を吸い込む。

相手の顔色を見て、相手の望む会話をすることは、もうやめたいから。

「私、小野原さんにとってパッと出の嫌な奴だって自覚ならあります!」

真衣香が突然大きな声を出したからだろうか。
「は?」と、小野原は未知の生物を見るような目で真衣香を凝視した。

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