つきとねこ

動物病院の看板が見えたとき息が上がり苦しかった。

ドアを開けて小次郎の主治医に軽く挨拶をする。

幸いにも今日は他の患畜はいなかったので、すぐに診てもらうことができた。

小次郎の血液検査をはじめる
検査結果を待っている時間がもどかしい。

診察台の上でぐったりしている小次郎をのぞきこむ
頬の辺りをなでてやる。
小さくゴロゴロと喉をならしている。

しばらくすると、主治医は検査結果の紙を眺めながら険しい顔をして戻ってきた。

「小次郎くん…いつからごはんを食べなくなってたんですか?」

いつから?

私はほとんど部屋から出なかったから分からない
お母さんなら何かわかるかもしれないがスマホを持ってくるのを忘れたので聞けない

「…分かりません…でも半年前からよくごはんを残してたような…」

「腎不全ですね」

「え…?」

「高齢の猫はかかりやすいんですよ、しかも腎不全は気づきにくくて症状が出たときには末期の場合が多いんです」

末期?

「……言いにくいですが、小次郎くんは…」

その先を聞きたくなかった

「あ、あの手術とかは?入院して…」

主治医は小次郎を撫でながら
「この状態だと手術をしても苦しませるだけです。それに、この年齢だと体力的にも耐えられるかどうか分かりません」

入院してケージの中で最期を迎えるか、慣れ親しんだ家で最期を迎えるか…
どちらが小次郎くんにとって幸せか考えてあげて下さい
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