つきとねこ

パパとママが寝静まった夜中、これが僕の時間だ。

ヤコウセイである猫の本能は押さえきれない。
「よし!遊ぶぞ!」という気持ちをこめて壁で爪をとぐ。

「小次郎、爪をとぐなら爪研ぎ!」

なんだ、柚月か。

柚月はいつもこの時間に部屋から出てくる。
僕の大嫌いなおふろに入ったり
台所に置いてあるパンやお菓子をいくつかとって部屋に戻る。

「ニャー」

爪をとぐくらいなんだよ!
柚月だって、こんな時間にお菓子なんて食べてたら太るぞ!

僕は抗議をしてみる。

僕の頭に手をおいて柚月はしゃがむ
覗きこんでくる顔はなんだか、気まずそうだ。

「今日もママ、部屋の前で私を呼んでたよね」

そうだぞ、オヤフコウモノ!

「私って親不孝ものだよね」

分かってるじゃないか

「ニャー」

「そうだって言いたいの?猫って人間に対して容赦ないよね」

猫は人間を支配する存在だからね。

「なんかバカみたいだよね。悪口を言われただけで学校に行けなくなるなんて…」

いじめられてるのか?ひっかいちゃえばいいのに。

「学校に行っても誰も話しかけてくれないの
友達だって思ってた子も私から離れちゃった…なんか学校に居づらいんだよね」

あー、あれか、ボス猫に歯向かったら
縄張りから追い出されるみたいな、あるよ、猫にもそんな風潮。

「もう、中学だって終わりなんだよね、私これからどうしたらいいんだろ」

柚月の声がしゃがれていた。

柚月が僕をだっこしてギュッと抱きしめた。

ほんとは、だっこは嫌いだけどがまんしてやるか。
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