愛を、乞う
プロローグ
 
 
窓から見える景色が夏から秋へと変わる頃、リビングの掃除をやっと終えた私は、今度は洗濯機が終わる電子音に眉を寄せた。

母子家庭で育ち、宮沢家では小学生の頃から土日は私が家事をする決まりになっている。
嫌だと思ったこともあるがサボったことは無い。
でも今日は、親友の川崎奈々と香取麻里奈をだいぶ待たせてしまっている。それもこれも夜中までパソコンゲームをしていた自分の責任なんだけれど。

急いでやらなければと思うのにかったるい、洗濯機の蓋を開けて2人分の洋服をカゴに入れると、痺れを切らした奈々からの着信でヤバイと思った。


「もしもーし、彩花ぁ?まだ?」
「ごめん、すぐ終わる!」
「もうそろそろ行かないと映画間に合わないんだけどー!」
「わかった!わかりました!ただ今行きます!」
「早くね!」


電話を切るとすぐに洗濯物を干し、お母さんの仕事で着るブラウスをハンガーに掛けて部屋へと持っていく。
仕事着だけはお母さんの部屋に直接干す、そう教わったのはいつだっただろうか?
そう、いつものように。

部屋のドアを乱暴に開けると、違和感を持つほど綺麗に片付けられていた。
いつも物で溢れていた母の部屋、首を傾げながらカーテンレールにハンガーを吊るし、ただ何となくクローゼットを開けた。
でもそこには、洋服一枚掛かっていなかった。
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