愛を、乞う
残された夏 宮沢彩花

 
あれから1週間、お母さんからの連絡は無い。

どうやらお母さんはパート先の店長と一緒にいなくなってしまったらしく、スーパーの従業員がいつまでも出社してこない店長とお母さんを心配して連絡してきたことで色々とわかった。
お母さんが働くスーパーは雇われる際に保証人が必要で、お母さんのお兄さんとお姉さんに連絡がいったのだ。

私は叔父さんと叔母さんからの連絡で何故クローゼットに何も入ってないのかを知り、ただ自分のこの状況を把握することだけで精一杯。
泣き叫ぶとか動揺するとか、そんな心の動きもまったく無くてただただどうしよう?とそればっかり。

少しずつ入ってきた情報では、お母さんが働くスーパーの店長は今年の春に異動で来たばかりの人で、まだ中学生のお子さんがいるとか。
店の従業員の中での評判もいい店長だったらしいけど、お母さんと噂が立つ頃にはあからさまな贔屓に誰もが知ってる仲になったとか。

知らぬは私だけだ。

お母さんに好きな人がいたなんて知らないし、変わった様子なんていくら考えてもわからない。
2人っきりの生活をずっと続けていたのに、私を置いていなくなるほどの恋をしていたなんてこともまったく気づかなかった。
< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop