愛を、乞う
私がお母さんの変化に気づいていれば何か変わったのだろうか?
でも相手は既婚者でお子さんもいるお父さんだ。
どちらにしてもきっとお母さんは私を選ばず、私は今のように1人になってしまっただろう。
でもこの出来事って……本当に私のこと?
何処かに心を置き忘れたみたいに何も感じない。
ただわかるのは、これからの生活は大変だろうという事だけだ。
私を心配して叔母さんと叔父さんが騒ぎの日から泊まりに来てくれていたけれど、2人には2人の生活がある。
いつまでも仕事を休んでいられないし、家に帰れば私と年の近い従兄弟たちが待っている。
自分の部屋から出るとリビングは静かなまま、2人は湯気の立つ紅茶のカップをテーブルに置いて深い溜め息を吐き私に気付いた。
「おはよう……彩花」
「おはよう」
「紅茶飲む?」
「うん」
叔母さんは私に微笑み、立ち上がるとリビングの向こうにあるキッチンへと向かう。
その後ろ姿は来た時よりも痩せたようで、私は居た堪れず目を逸らして叔父さんの隣に座った。
「……ごめんな、彩花」
掠れた声でそう囁く叔父さんに首を振ることしか出来ない。
叔父さんは悪くない、叔母さんだって悪くない。