愛を、乞う
「叔父さんが謝ることじゃないよ。……何処行っちゃったんだろうね、お母さん」
「バカな女だよ、姉さんは」
叔父さんは吐き捨てるようにそう言うとカップを手に取り悲しげに紅茶を見詰める。
「隆さんが亡くなった時、姉さん言ったんだよ。彩花を全力で守るって」
隆とは私の父だ。
まだ私が小学3年の時にすい臓がんで亡くなった。
とても優しくてとてもかっこよくて、お母さんはいつもお父さんの事ばかりで。
そんな父よりも好きになったと言うのか?その、店長とやらを。
ちょうど叔母さんが紅茶を持ってきてくれて、カップを受け取るとアールグレイの香りに誘われ口を付けた。
お母さんが好きな紅茶を一口飲み、心の中に出来たどうしようもない塊りをも一緒に嚥下する。
「ねぇ、叔父さんと叔母さんに聞いてもらいたい事があるの」
まるで自分の口から出てきた言葉じゃないみたい。
でも、言わなきゃならない。
「私ね、学校を辞めて働こうと思うの」
「何を言ってるんだ、彩花」
「そうよ、彩花は何にも心配する必要ないのよ!」
私はまた紅茶に口を付けて少し飲むと、テーブルに置いて2人の真剣な顔を見る。
「だってそれが一番いいと思うの」
私なりに考えて出した答えだ。