俺様副社長に娶られました
けれども。


「やっぱり……流されてもいいから、」
「……へ?」
「そういうこと言うのも、そういう顔見せるのも。俺の前だけにしろよ」


わたしは火照ってのぼせた顔で、こんな顔になるのは創平さんの前だけだと、自信を持って思った瞬間。

創平さんは鼻を押さえていたわたしの手を強引に剥がすと、今度は両手でがっちり頬を抑え込む。
そして突然の行動に驚いて目を丸くするわたしの唇に、唇を重ねた。


「っん……」


押し付けるような高圧的なキス。
苦しくて顔を動かそうとしたとき、ゆっくり開いた創平さんの唇が、わたしのを柔らかく挟み込んだ。

恥ずかしくて、酸素不足で頭がぼうっとしてきて、意識がどっかにいっちゃいそう……。
創平さんのしっとりと馴染む口内の動きに合わせるのに精一杯な初心者のわたしだけれど、息苦しさが次第に心地良さに変化してゆく。


「んっ……ふ……」


手で頬を固定して、身動きが取れないようにしているのに、口内の動きは滑らかで柔らかい。
こんなキスがあるんだなんて、今の今まで知らなかった。

チュッとリップ音を立てて唇を離した創平さんは、息を乱すわたしの頬を優しく撫で、身を引き締めるように目で圧する。


「俺はかなり独占欲が強いんだ。覚えとけ」


それはことごとく傲慢で、高圧的な物言いだったけれども、わたしの耳には心をとろかすラブソングのように心地よく甘く響いた。


「ずっと俺だけ見てろよ」


強制されなくても、わたしは首を振ることなんて絶対に無い。
ほかの人なんて目に入らないくらい、創平さんに夢中だから。

わたしは情けないくらい不器用だけども、創平さんに対する思いだけは誰にも負けないって思えるほど。

それを伝えたいっていう欲が、汲めども尽きずに溢れてくる。


「……最初からずっと、創平さんのことしか見てないです……」


両目から溢れた涙が、わたしの頬と創平さんの手を濡らす。


「なんだそれ、可愛すぎ」


溜め息交じりに言った創平さんは、わたしの体を抱きすくめた。
無視できない衝動みたいに素早い技だったので、びっくりして胸がドキドキうるさくなった。創平さんの胸の中でわたしは、体を小さく丸めてぬくもりを堪能する。
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