俺様副社長に娶られました
瞼の向こうが白んでいるような気がして、薄目を開けようとしたわたしは後頭部にキンと響いた痛みに眉根を寄せた。


「っ痛」


もう朝か。起きなきゃ……。

頭全体がどくどく脈打ち、神経を刺激するような頭痛。
わたしは文字通り頭を抱え、なんとか頑張って半身を起こした。


「い、痛たた」


二日酔いってやつだ。

昨夜、例の居酒屋に行って、たしか隣に居合わせたお客さんに勧められてほんの少しだけお酒を飲んだ。
馴染みの銘柄を見せられて断れなかったんだっけ……?

ああ、思い出せない。
記憶が途切れ途切れになってる。


「はあ、お薬飲もう」


薬箱の中にお父さんが二日酔いのときに飲む薬があったはず。
それを飲んで、なんだか今日はやけに肌寒いから熱いシャワーを浴びよう。

目は半開きの状態で、うなだれながらものっそりとベッドから立ち上がろうとしたとき、薄く開いた狭い視界の中に肌色が見えた。

わたしは驚いて、自分の姿を確認した。
すると。


「え……」


裸だった。真っ裸。
道理で、肌寒いわけだ。


「また、やってしまった……」


自己嫌悪に陥ったとき、腰回りにするりとなにかが巻きついた。


「っひい!」


起き抜けの緩慢な動きがまるで嘘みたいに、勢い良くわたしの両肩が跳ねる。

ウエストに巻きつくものは、生温かくしっとりとした感触だった。恐ろしい予感が存分にして、背筋がゾッとした。

なにこれ、人間⁉︎
そ、それとも……。


「キャーッ!」


科学じゃ証明できないなにかかも! と思った瞬間、わたしの口から悲鳴みたいな声が出た。
あまりの衝撃で、もう音量の制御は不能だ。
< 2 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop