俺様副社長に娶られました
「あら創平くん」
わたしたちが座るテーブル席に近付いて来て、声をかけたのはお母さんだった。
スイーツで満腹になったのだろう、ほくほくとした満足そうな笑顔だ。
「おばさん、お久しぶりです」
すくっと機敏に立ち上がっら創平さんは、とても綺麗な角度でお母さんにお辞儀をした。
「どう? 沙穂、大きくなったでしょ」
おほほ、なんて他所行きの上品ぶった声で笑うお母さんに対し、創平さんは真剣な表情を向ける。
「はい、とても素敵なお嬢さんになられて見違えました」
「まあ、お上手ね。よかったわね、沙穂」
……今の、本当に創平さんが言ったの?
さっきまでの意地悪な態度からは想像もつかない完璧さ。
お母さんに座るよう椅子を引いてエスコートする様は、流れるような所作がとてもスマートで育ちと品の良さを感じる。
「いえ、私はいいのよ。ふたりの方がいいかと思って、遠慮するわ」
「おばさんのお許しをいただけるのなら、ぜひ沙穂さんともう少しお話したいです」
お母さんの前だと、キャラが違くない……?
「お許しだなんて。どうぞどうぞ、どこでも連れてってください、この子。庭園を散歩でもしてきたらどう?」
「いいですね。行きましょう、沙穂さん」
創平さんの誠実な態度に、お母さんはすっかり気を許している。
わたしはというとその仮面のような張りぼての笑顔に、軽く戦慄していた。
「沙穂、楽しんでらっしゃい」
どうやら当人同士の顔合わせは上手くいったようだと安心しきった顔でひらひらと優雅に手を振り、お母さんはその場を立ち去った。
「早くしろ、日が傾くと冷えるだろ?」
お母さんの呑気すぎる後ろ姿を見つめていたわたしの視界を覆ったのは、ギロリと睨む創平さんの顔だった。
「は、はあ……」
なにこの急変。
さ、先が思いやられる……。
自慢の庭園は桜がちらほら咲き始めた頃だった。舗装された細い道を、ゆっくりと和装の慣れない足で歩く。
創平さんが時折季節の花を見るために足を止めてくれるお陰で、心許ない足元も焦らずに平気だった。
八重咲きで、中心が濃いピンク色の花がとても綺麗。
満開になると素晴らしい見応えなんだろうなぁ。
「綺麗ですね」
うっとりと可憐な花を見上げると、そばに寄った創平さんが触れそうなくらいまで手を伸ばした。
わたしたちが座るテーブル席に近付いて来て、声をかけたのはお母さんだった。
スイーツで満腹になったのだろう、ほくほくとした満足そうな笑顔だ。
「おばさん、お久しぶりです」
すくっと機敏に立ち上がっら創平さんは、とても綺麗な角度でお母さんにお辞儀をした。
「どう? 沙穂、大きくなったでしょ」
おほほ、なんて他所行きの上品ぶった声で笑うお母さんに対し、創平さんは真剣な表情を向ける。
「はい、とても素敵なお嬢さんになられて見違えました」
「まあ、お上手ね。よかったわね、沙穂」
……今の、本当に創平さんが言ったの?
さっきまでの意地悪な態度からは想像もつかない完璧さ。
お母さんに座るよう椅子を引いてエスコートする様は、流れるような所作がとてもスマートで育ちと品の良さを感じる。
「いえ、私はいいのよ。ふたりの方がいいかと思って、遠慮するわ」
「おばさんのお許しをいただけるのなら、ぜひ沙穂さんともう少しお話したいです」
お母さんの前だと、キャラが違くない……?
「お許しだなんて。どうぞどうぞ、どこでも連れてってください、この子。庭園を散歩でもしてきたらどう?」
「いいですね。行きましょう、沙穂さん」
創平さんの誠実な態度に、お母さんはすっかり気を許している。
わたしはというとその仮面のような張りぼての笑顔に、軽く戦慄していた。
「沙穂、楽しんでらっしゃい」
どうやら当人同士の顔合わせは上手くいったようだと安心しきった顔でひらひらと優雅に手を振り、お母さんはその場を立ち去った。
「早くしろ、日が傾くと冷えるだろ?」
お母さんの呑気すぎる後ろ姿を見つめていたわたしの視界を覆ったのは、ギロリと睨む創平さんの顔だった。
「は、はあ……」
なにこの急変。
さ、先が思いやられる……。
自慢の庭園は桜がちらほら咲き始めた頃だった。舗装された細い道を、ゆっくりと和装の慣れない足で歩く。
創平さんが時折季節の花を見るために足を止めてくれるお陰で、心許ない足元も焦らずに平気だった。
八重咲きで、中心が濃いピンク色の花がとても綺麗。
満開になると素晴らしい見応えなんだろうなぁ。
「綺麗ですね」
うっとりと可憐な花を見上げると、そばに寄った創平さんが触れそうなくらいまで手を伸ばした。