俺様副社長に娶られました
恥ずかしいのに心地良くて、目蓋がとろんと重たくなってくる。


「沙穂」


囁かれ、さっきから距離が近過ぎて向け場が分からず、下に落としていた目線をおずおずと上げる。
すると睫毛を伏せ、色気たっぷりに目を細めた創平さんが瞳いっぱいに映った。

更に距離は狭まり、いよいよ鼻同士がぶつかって、緊張でギュッと目を閉じようとしたときだった。


「なんか、されると思った?」


鼻をキュッと摘まれて、わたしは両眼をぱちくりさせる。


「流されるな」
「え、ええ?」


仰る通り、そういう雰囲気なのかなって思った。キス、するのかなって。
恋人同士でイチャイチャするような経験が全くないわたしは完全に流された。

緊張で動けなかったってのもあるけれど、受け入れる気満々っぽくて期待してるみたいで究極に恥ずかしすぎる!


「あ、沙穂」


バスルームに向かっていた創平さんは、思い出したようにピタッと足を止めた。


「明日と明後日、一緒に出かけるから」


振り向かずにそれだけ言って、脱衣所のドアを閉めた。


「は、はいぃ……」


わたしは摘まれた鼻頭を手で抑える。

出かけるって、どこに?
デートってこと?

一緒に行ってくれるなら、インテリアショップがいいなぁと、わたしは淡い期待を抱いた。




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