俺様副社長に娶られました
ベッドの上で、わたしの動きを観賞していた男はのんびりとした声で顎で指した。
一瞬目が合って無性に気まずくて恥ずかしくて、顔から火が出そうなくらいに熱かった。

さっと屈んで下着を拾い、両腕に抱える。
けれどもシャワールームの方向にダッシュしようとした矢先、無情にも腕の隙間からパンツがポロンと落ちた。

よりによって、パンツが。


「……っ」


慌てて拾おうとしたら、今度は体に巻きつけていた毛布が剥がれそうになって、二本しかない手を酷使して巻き直す。
そしたら毛布を床に引きずってしまい、躓いて転びそうになった。


「っうわ!」


でも手を離したら、今度はパンツだけではなく毛布が捲れて違うものがポロンとしてしまう……!

なんとか体を斜めにして辛うじて全体のバランスを取っているわたしの耳に、辟易とした風な溜め息が聞こえてきた。


「知らない男に取って食われたくなきゃ、今度からは酒には気をつけるんだな」


ようやくシャワールームのドアまでたどり着いたわたしは、肩越しに振り向く。


「と、取って食う……?」


すると男は片眉をピクリと上げ、意地悪そうに口端に角度をつけて押し殺すようにクッとと笑った。



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