俺様副社長に娶られました
つまりホテル側に融通を利かせてもらえるってことかしら。よく利用するのかな。
こんな風に、わたしとじゃない女の人と、とか……。
部屋の前まで来て、わたしが逡巡する間、創平さんはなにも言わずただドアを開けて待っててくれた。
「創平さん、お仕事の途中だったんじゃ……?」
創平さんと親しい女性として越谷さんのことを思い出してしまったわたしは、後ろ手にドアを閉めた創平さんに恐る恐る声をかける。
「今日はもういい。っていうか勝手に帰ってんなよ」
「す、すみません……」
だって創平さんはなによりもお仕事が大切だから、迷惑かけないようにしようって思ってたのに……。また、空回りしてしまった。
『副社長があなたと結婚したのは、ご存知とは思いますけど縁起物の純米吟醸を手に入れ続けるためです』
わたしは、ただそれだけのための存在だから。
せめて仕事に支障をきたさないようにしなくちゃいけないのに……。
俯くと、泰生くんのシャツが目に入った。
借りたまま、ずっと手に持ったままで返しそびれてしまった。
「ほかの男に触らせてんな」
真正面から伸びてきた大きな手のひらが、わたしの頭頂部をがっしり掴んで湿った髪をわしゃわしゃ撫でる。
「ほかの男に気安く口説かれてんなよ」
わたしが持って来てしまった男物のシャツを見下ろして、創平さんが苛立った口調で呟いた。
「違うんです、あれは……」
泰生くんとの関係をもう一度説明しようとして、パッと顔を上げたわたしの目の前に創平さんが接近する。
鼻先が触れ合う寸でのところで、創平さんは目に力を込めて面食らったわたしを見た。
「隙だらけ。黙ってたら期待させるぞ」
わたしの鼻先をキュッと指で摘んで、創平さんは溜め息を吐く。
「……わたしは……」
一瞬でも、キスされるんじゃないかと思った自分が恥ずかしい、けど。
「期待されてもいいです。創平さんになら」
比喩ではなく本当に、火が出るんじゃないかと思うほど真っ赤になった顔を隠すために下を見る。
すると頭上から、はあ〜っという盛大な溜め息が聞こえた。
「さっきほかの男にキスされそうになってビビッてたのに、煽ってくるってどーゆーこと?」
こんな風に、わたしとじゃない女の人と、とか……。
部屋の前まで来て、わたしが逡巡する間、創平さんはなにも言わずただドアを開けて待っててくれた。
「創平さん、お仕事の途中だったんじゃ……?」
創平さんと親しい女性として越谷さんのことを思い出してしまったわたしは、後ろ手にドアを閉めた創平さんに恐る恐る声をかける。
「今日はもういい。っていうか勝手に帰ってんなよ」
「す、すみません……」
だって創平さんはなによりもお仕事が大切だから、迷惑かけないようにしようって思ってたのに……。また、空回りしてしまった。
『副社長があなたと結婚したのは、ご存知とは思いますけど縁起物の純米吟醸を手に入れ続けるためです』
わたしは、ただそれだけのための存在だから。
せめて仕事に支障をきたさないようにしなくちゃいけないのに……。
俯くと、泰生くんのシャツが目に入った。
借りたまま、ずっと手に持ったままで返しそびれてしまった。
「ほかの男に触らせてんな」
真正面から伸びてきた大きな手のひらが、わたしの頭頂部をがっしり掴んで湿った髪をわしゃわしゃ撫でる。
「ほかの男に気安く口説かれてんなよ」
わたしが持って来てしまった男物のシャツを見下ろして、創平さんが苛立った口調で呟いた。
「違うんです、あれは……」
泰生くんとの関係をもう一度説明しようとして、パッと顔を上げたわたしの目の前に創平さんが接近する。
鼻先が触れ合う寸でのところで、創平さんは目に力を込めて面食らったわたしを見た。
「隙だらけ。黙ってたら期待させるぞ」
わたしの鼻先をキュッと指で摘んで、創平さんは溜め息を吐く。
「……わたしは……」
一瞬でも、キスされるんじゃないかと思った自分が恥ずかしい、けど。
「期待されてもいいです。創平さんになら」
比喩ではなく本当に、火が出るんじゃないかと思うほど真っ赤になった顔を隠すために下を見る。
すると頭上から、はあ〜っという盛大な溜め息が聞こえた。
「さっきほかの男にキスされそうになってビビッてたのに、煽ってくるってどーゆーこと?」