俺様副社長に娶られました
お母さんたちに、娘を政略結婚させた負い目があるんだなって思ったら、自然と胸が苦しくなって泣けてきた。
わたしがひとりでうまくやらなきゃと、すべて酒蔵のためだと背負い込んでることをきっと心苦しく思ってるんだ。
お母さんも、不安だよね。
わたしばかりが犠牲になってると思ってたこと、考え直さなきゃ……。
「うんっ、ありがとう」
いろんな感情が湧き上がってきて、わたしはすぐさま振り向いた。
お陰で涙が頬を伝ったところは、お母さんに見られなくて済んだと思う。
それから一日直売所で働いて、夕方地元の病院に行った。
整形外科の受付で事情を話している最中、後ろから来た人が、わたしのことを背後から覗き込んで来るのが気配で分かった。
「沙穂ちゃん?」
聞き覚えのある声に、わたしはハッとする。
「た、泰生くん」
振り返るとやはり泰生くんが立っていて、ニッと愛想よく微笑んだ。
そして昨日のことなんて、まるでなにもなかったかのようなあっけらかんとした態度で言った。
「じいちゃんのお見舞いに来てくれたの? わざわざごめんね」
「あ、ううん」
もし病院で鉢合わせたら気まずいな、と警戒していたわたしは拍子抜けする。
受付の方にお礼をして、わたしは泰生くんの案内で病室に向かった。
「布施さんの様子はどう?」
「うん、足以外はピンピンしてる」
「そっか、足は心配だけど、元気そうなら良かったよ」
「うちの実家の階段、手すりもないし滑り止めもないからいつかこうなるんじゃないかって心配してて、折に触れてリフォームしようって話にはなってたんだけど、じいちゃんが頑固だから大丈夫だって言ってきかなくてさ」
階段で二階に上がりながら、泰生くんは困った風に眉を下げた。
「だからじいちゃんが入院してる間にリフォームを強行するつもり」
「そっか、それがいいね」
ニカッと邪気のない笑顔を見せる泰生くん釣られてわたしの顔にも自然と笑顔が溢れた。
「ここだよ、じいちゃんの病室」
病室のドアの横にある画面をタッチすると名前が表示される。
ノックしてドアを開けると、四人部屋だったのでわたしは静かに入室した。
「お邪魔します」
「じいちゃん、沙穂ちゃんがお見舞いに来てくれたよ」
一番奥の窓際のベッドで、布施さんは起きて本を読んでいた。
わたしがひとりでうまくやらなきゃと、すべて酒蔵のためだと背負い込んでることをきっと心苦しく思ってるんだ。
お母さんも、不安だよね。
わたしばかりが犠牲になってると思ってたこと、考え直さなきゃ……。
「うんっ、ありがとう」
いろんな感情が湧き上がってきて、わたしはすぐさま振り向いた。
お陰で涙が頬を伝ったところは、お母さんに見られなくて済んだと思う。
それから一日直売所で働いて、夕方地元の病院に行った。
整形外科の受付で事情を話している最中、後ろから来た人が、わたしのことを背後から覗き込んで来るのが気配で分かった。
「沙穂ちゃん?」
聞き覚えのある声に、わたしはハッとする。
「た、泰生くん」
振り返るとやはり泰生くんが立っていて、ニッと愛想よく微笑んだ。
そして昨日のことなんて、まるでなにもなかったかのようなあっけらかんとした態度で言った。
「じいちゃんのお見舞いに来てくれたの? わざわざごめんね」
「あ、ううん」
もし病院で鉢合わせたら気まずいな、と警戒していたわたしは拍子抜けする。
受付の方にお礼をして、わたしは泰生くんの案内で病室に向かった。
「布施さんの様子はどう?」
「うん、足以外はピンピンしてる」
「そっか、足は心配だけど、元気そうなら良かったよ」
「うちの実家の階段、手すりもないし滑り止めもないからいつかこうなるんじゃないかって心配してて、折に触れてリフォームしようって話にはなってたんだけど、じいちゃんが頑固だから大丈夫だって言ってきかなくてさ」
階段で二階に上がりながら、泰生くんは困った風に眉を下げた。
「だからじいちゃんが入院してる間にリフォームを強行するつもり」
「そっか、それがいいね」
ニカッと邪気のない笑顔を見せる泰生くん釣られてわたしの顔にも自然と笑顔が溢れた。
「ここだよ、じいちゃんの病室」
病室のドアの横にある画面をタッチすると名前が表示される。
ノックしてドアを開けると、四人部屋だったのでわたしは静かに入室した。
「お邪魔します」
「じいちゃん、沙穂ちゃんがお見舞いに来てくれたよ」
一番奥の窓際のベッドで、布施さんは起きて本を読んでいた。