俺様副社長に娶られました
驚いた新ちゃんが、直売所内にこだまするような大声で言う。
溜め息みたいな大きな息を吐いた創平さんは、慎ちゃんに軽く一礼すると射抜くように強くわたしを目で捉えた。
「ど、どうしたんですか創平さん」
「あのガキは?」
つっけんどんに言った創平さんを、何事かと思ったわたしは気後れし、ぽかんと見つめ返す。
ガキ? って……。もしかして。
「泰生くん、のことですか?」
返事もできないほど不愉快なのか、創平さんはただ眉間に皺を寄せ、嫌悪を滲ませた顔をする。
不穏な空気を察したのか、慎ちゃんはさっさと手際良く包装し、わたしに紙袋を持たせると事務所の方へ入って行った。
「さっきまで一緒でしたけど……。泰生くんがあのカフェバーが入ってる商業ビルのコーヒーショップでバイトしてるので、シャツを返しに行ったんです」
創平さんがなぜ泰生くんを探しているのか全くもって判然としないわたしは小首を傾げた。
「泰生くんは布施さんのお見舞いに行くと言って、駅で別れましたけど……」
煩わしげに溜め息を吐いた創平さんは、チッと舌打ちをする。
「あの女……」
そしてなんとも不本意そうな、憎らしげな声で吐き捨てた。
「お、女?」
「あのでしゃばった親父の秘書が、沙穂と一緒に実家に帰ったなんて言うから……てっきり、その」
こんなに歯切れが悪い創平さんは、初めて見た。
「わたしが、泰生くんと一緒にここに戻って来たと思ったんですか?」
帰るとか戻るという言葉がどういうニュアンスなのか、探るようにわたしが聞くと、創平さんは観念したように一瞬宙を仰ぐ。
「もう俺のとこには戻ってこないかと思って、焦った。」
疲弊したような声で言って、創平さんは立ち尽くすわたしに間合いを詰める。
緊張と安堵という、矛盾をはらんだ空気がまといつく。
「い、いえ、わたしは北極星を取りに来ただけで……。越谷さんに今夜の会合のことを聞いたので」
「……あの女のせいで振り回されたわ」
「あの、ちょっと待ってください。越谷さんって創平さんの秘書じゃないんですか?」
「違うよ、俺の秘書は実沢。今新婚旅行に行ってるから休んでる」
「え! そうだったんですか……」
「沙穂と俺の地元に行ったとき急に越谷から電話が来て、実沢の穴を自分が埋めるとか言い出して」
溜め息みたいな大きな息を吐いた創平さんは、慎ちゃんに軽く一礼すると射抜くように強くわたしを目で捉えた。
「ど、どうしたんですか創平さん」
「あのガキは?」
つっけんどんに言った創平さんを、何事かと思ったわたしは気後れし、ぽかんと見つめ返す。
ガキ? って……。もしかして。
「泰生くん、のことですか?」
返事もできないほど不愉快なのか、創平さんはただ眉間に皺を寄せ、嫌悪を滲ませた顔をする。
不穏な空気を察したのか、慎ちゃんはさっさと手際良く包装し、わたしに紙袋を持たせると事務所の方へ入って行った。
「さっきまで一緒でしたけど……。泰生くんがあのカフェバーが入ってる商業ビルのコーヒーショップでバイトしてるので、シャツを返しに行ったんです」
創平さんがなぜ泰生くんを探しているのか全くもって判然としないわたしは小首を傾げた。
「泰生くんは布施さんのお見舞いに行くと言って、駅で別れましたけど……」
煩わしげに溜め息を吐いた創平さんは、チッと舌打ちをする。
「あの女……」
そしてなんとも不本意そうな、憎らしげな声で吐き捨てた。
「お、女?」
「あのでしゃばった親父の秘書が、沙穂と一緒に実家に帰ったなんて言うから……てっきり、その」
こんなに歯切れが悪い創平さんは、初めて見た。
「わたしが、泰生くんと一緒にここに戻って来たと思ったんですか?」
帰るとか戻るという言葉がどういうニュアンスなのか、探るようにわたしが聞くと、創平さんは観念したように一瞬宙を仰ぐ。
「もう俺のとこには戻ってこないかと思って、焦った。」
疲弊したような声で言って、創平さんは立ち尽くすわたしに間合いを詰める。
緊張と安堵という、矛盾をはらんだ空気がまといつく。
「い、いえ、わたしは北極星を取りに来ただけで……。越谷さんに今夜の会合のことを聞いたので」
「……あの女のせいで振り回されたわ」
「あの、ちょっと待ってください。越谷さんって創平さんの秘書じゃないんですか?」
「違うよ、俺の秘書は実沢。今新婚旅行に行ってるから休んでる」
「え! そうだったんですか……」
「沙穂と俺の地元に行ったとき急に越谷から電話が来て、実沢の穴を自分が埋めるとか言い出して」