俺様副社長に娶られました
「そ、創平さん……?」


無言でわたしの右の薬指に、その輝きを嵌める。
きらめきが放射し比類のない照度で、まるでわたしの手全体が輝いているかのように錯覚する。


「あの、これ。高かったんじゃ……」


放心状態でされるがままのわたしは、驚きすぎてそんな色気のない感想を言ってしまった。

わたしの右手の薬指に収まったのは、入籍した日に商業ビルのアクセサリーショップで見た、星のように光る大きなダイヤモンド。



「全然。これでずっと欲しかったもんが手に入るなら、安いよ」


わたしの不安を一蹴するように事も無げに言って、創平さんはわたしの手を持ち、親指の腹で甲を撫でる。
その摩擦から生まれる温度に、愛おしさが籠もっているように感じて、胸の奥で熱いものがグッとこみ上げてくる。


「ほ、欲しかったもの……?」


鼻声で、ぎこちない角度で首を曲げるわたしを、創平さんはもどかしそうに抱き寄せた。
わたしの体を包み込むようにぎゅうっと強く抱き締める。


「そう、これ。」


それって……北極星、ですか?

それとも、まさか……。

わたし……?


「手がかかって困るし、目が離せないけど。そこが可愛くて仕方ないんだ」


わたしに覆いかぶさるような体勢で、すぐ耳元で聞こえる創平さんのきゅうきゅうとした声に、胸を締めつけられて止まない。


「俺をこんなに焦らせた責任取れ」


し、信じられない……。


「っ、」


声にならない。

だって、こんなに幸せな責任の取り方なんてある?
創平さんがわたしを思ってくれるなんて、そんな幸せなことがあっていいのかな。

名残惜しく体を離した創平さんは、わたしの頬に伝わる涙を指で拭うと、さっさとわたしの体を助手席に押し込んだ。


「さ、とにかく今は急いでるから」


創平さんは颯爽と運転席に乗り込み、エンジンをかけギアを操作する。
右手の指で輝く指輪と創平さんとを見比べているそわそわしたわたしを、創平さんは鬱陶しそうに見た。


「……あの、こんなに素敵な指輪、本当にわたしが頂いてもいいのでしょうか?」


圧倒的な美しさに、分不相応なんじゃないかと思ってしまう。
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