【女の事件】いらくさの家
第3話
午後2時50分頃のことであった。

ところ変わって、野毛中央通りに面したオフィスビルに入っている多香子の父親の職場にて…

多香子の父親は、無愛想な表情でじっと窓の外を見つめていた。

この時、窓の外に写っている空は白くてものすごく大きな雲がもくもくと上がっていたので、多香子の父親のイライラがさらに高まっていた。

そんな中であった。

大きめの封筒を持っている会計の男性従業員さんがものすごくもうしわけない表情で多香子の父親のもとへやって来た。

「ああ…小松崎部長…」
「なんだ…(会計の男性従業員さん)くんか…」
「小松崎部長…ちょっとお願いがありますがよろしいでしょうか?」
「お願い…」
「2課の水尾さんの結婚祝いのカンパのお願いに来ました。」
「(不機嫌な声で)また従業員の結婚祝いなのか…」
「部長…どうかなされたのでしょうか…」
「ふたりの娘が、わしの想いに答えようとしないから怒っているのだよ!!」
「えっ?部長の娘さん…ご結婚はまだでおましたか…」
「ひとりは出戻りで、もうひとりは持ってきてくださったお見合いに文句ばかりいっているので、イラついているのだよ!!」
「そうでしたか…」
「それはそうと…2課の水尾さんは…今月いっぱいで寿(退職)だな…」
「ええ…挙式披露宴は、先方さんのご出身地の熊本で挙げられる予定です…先方さんは、結婚と同時に今の職場をおやめになられて、益城町にありますご実家へ帰られることになりました。」
「熊本へ移るのか…」
「ええ…」
「仕事はどうするのだ?」
「えっ?」
「水尾さんのダンナになる男性の仕事はどうするのだと聞いているのだ!!」
「ですから、地元の役場に再就職をすることが決まっているのですよ…」
「それだったらいい…」
「部長、どういうわけなのでしょうか?」
「どういうわけなのでしょうかって?決まっているじゃないか…転職先は収入は安定しているのか…転職先は終身雇用かと聞いているのだ!!」
「部長…それはどういうわけなのでしょうか?」
「どういうわけって…お嫁さんは専業主婦で床の間にかざってもらう方がしあわせだと言うているのだよ!!」
「部長…それはどういう意味なのでしょうか…それじゃ、夫婦共稼ぎの世帯はお嫁さんはしあわせにはなれないと言いたいのでしょうか?」
「いや、そこまでは言っていないよ…それは私個人の意見であって、結婚するのであれば、専業主婦として床の間にかざってもらえる方が幸せになれるのでは…と想って言うただけだよ。」
「部長、私には部長が言うてはる言葉の意味が理解できません…繰り返しておたずねしますが、夫婦共稼ぎの世帯はしあわせになれないと言うわけなのでしょうか?」
「なっ、何を言うのだね!!(ますます怒りぎみになって言う)私がいつそんなひどいことを言ったと言うのだね!!」
「部長…どうしていちいち目くじらを立ててばかりいるのですか!?」
「君が私に小うるさく反論したからだ!!」
「部長…そういう部長も、自分が犯したあやまちをよぉに思い出してくださいよ…」
「何のことなのだ一体!!」
「部長ね…9年前に(部下の女性)さんにマタハラをしでかしたことが原因で、(部下の女性)さんを無期限休職に追い込ませておいて、よぉそななえらそうなことが言えまんなぁ…部長が育ボスで(部下の女性)さんの娘さんの送り迎えをしていることと、部長のお宅に住まわせている原因がまだわかってへんみたいですね…母親が海外出張中と家族にウソつき回していたらそのうち手痛いシッペ返し喰らいまっせ…」

多香子の父親は、会計の男性従業員さんに言われた言葉にキレていたので『水尾に言うておけ!!』と言うてから『祝儀は出さない!!甘ったれるなと強烈な声で言っておけ!!』と怒鳴りつけた後、デスクに座ってブツブツ言いながら仕事をしていた。

「…ったく…職場を何じゃあ想っているのだ!!うちの従業員どもは甘ったればかりだ!!」

夕方5時過ぎのことであった。

多香子の父親が部下の女性の娘さんの送り迎えをしていた頃であった。

美香子は、西区平沼にあるすき家(牛丼屋さん)でバイトをしていた。

美香子は一生懸命になってバイトをがんばっていたが、職を転々とすることばかりを繰り返していたことが原因で思うように働くことができずに苦しんでいた。

家にいれば、両親から『いつになれば結婚するのだ!!』などとどぎつい声で言われてばかりいたので、結婚する意欲もうせていた。

美香子のギスギスした気持ちは、勤務態度にも直接現れていた。

この日、仕事中にとんでもないミスを犯してしまった。

この時、店内は大勢のお客様でごった返していたので、美香子はお客様の対応に追われていた。

そんな中で、美香子が先に来たお客様の注文を取ろうとしていた時にあとから来た男性客が声をかけてきたので『先に来たお客様が急いでいるので…』とたしなめる声で言うたあと先に来たお客様の注文を取っていた。

そして、あとから来た男性客に『お待たせしました…』と言うて、注文を取ろうとしたときであった。

男性客は美香子が発した言葉にキレていたので、美香子が持っていた注文を取る時に使うタブレットを取り上げて、美香子のこめかみを激しい力で殴り付けた。

(ガシャーン!!)

「オラオドレ!!もういっぺん言ってみろ!!よくも客に対して暴言を吐いたな!!」
「アタシは暴言を吐いていません…」
「オラオドレ!!」

(ドスン!!ギュゥゥゥゥゥゥ!!)

男性客は、美香子を突き飛ばした後、髪の毛を思い切り引っ張って、ベルトで美香子の首をしめて窒息死寸前に追い込ませた。

窒息死寸前でベルトをゆるめた男は、刃物を振り回して暴れたあげくに、先に来た男性客を刃物で切りつけて殺してしまった。

その後、男は数人の客にも刃物で切りつけて死傷させるなどしていたので、店内はシュラバと化していた。

男は、美香子に暴行を加えたことと店にいた客数人を死傷させるなどの無差別殺人・殺人未遂容疑でケーサツに逮捕された。

美香子は、複数の店員さんたちに起こされた後、傷の手当てを受けていた。

それなのに、美香子はチーフの男性から『おい小松崎…本部の人間が事務所にいるからすぐに行け…』と突き放す声で言われた。

美香子はこの時『またバイトをクビになるかもしれない』と想いましてビクビクしていた。

ところ変わって、店舗の事務所にて…

美香子は、(ZENSHOの)本部の男性からより強烈な言葉でバトウされた。

本部の男性は、美香子の接客態度が悪いことを持ち出した後、強烈な言葉で美香子をバトウした。

「小松崎さん…あんたはうち(ZENSHO)のカラーにゼンゼンあわへんことをしてはるみたいだね…あんたの接客態度が悪い上に、ため口が多い、お客様に暴言を吐きまくっている…その上に、勤務中におしゃべりばかりが目立つ…仕事はろくにせえへんわりに帰宅時間だけは早いみたいだね…その上に、差し出された勤務表に記載されている時間を守らずにローテーションをめちゃくちゃ変えているから、あんたはナマケモノやねぇ…」
「あんまりです!!アタシは一生懸命になってがんばっているのに…何なのですか!!」
「なんとでも言えや…あんたは、職場風土を乱すようなことばかり繰り返しているさかいに…やめてもらうより他はないみたいだね…あんたは…どないして結婚せなんだのかいのぉ…」
「どうしてって…」
「20代から30代の前半に遊びまくってのらりくらりしてはったから良縁が逃げたんや…20代から30代の前半に結婚してはったら今頃専業主婦として床の間にかざってもらえていたのに…もったいないことしたねぇ…」

美香子は、本部の男性が言うた言葉にキレてしまったので、怒りを込めてつばを吐いた。

「なっ、何するんや!!オドレは目上の人間につばを吐いて何や!!」

(バサッ!!バサッ!!)

思い切りキレてしまった美香子は、本部の男性に店の制服を投げつけて、その後平手打ちで本部の男性の顔を強烈な力で叩いてひどい大ケガを負わせて、右足でまたくらをけとばした後、あかんべーをして事務所を立ち去った。

もうひとりの男性は『何や小松崎は!!態度が悪い従業員だ!!本部に電話をしろ!!』と激怒していた。

美香子は、この時点ですき家をクビになっていたので、『これでクビになったのは、何度目になるのだろうかと…』と言うのが分からなくなっていた。

美香子は、4月14日を境にしてシューカツを放棄してダラクすることを選ぶと訣意(けつい)したので、どうしようもないドアホになっていた。

もうダメ…

アタシは…

どこへ行っても役に立たない…

もうダメ…

もうダメ…
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