消えない茜色
涙が止まらなかった。涙が枯れるまで泣いたのは、このときが初めてだった。
初めて誰かを愛した。それは相手を愛しいと思うだけでなく、相手を思い出すだけで心が温まった。
その思い出はもう、相手にはない。
そう思うと、泣き叫ばずにはいられなかった。
◆
「生きてるか?」
目を開けると、星南がいた。木の根元で眠っていたらしい。
紫乃との出会いを夢見たせいか、星南を紫乃だと勘違いしそうになった。
「あの木の小僧に聞いた。また記憶を消そうとしているらしいな」
頼は黙ったまま首を縦に振る。
「今の頼の力では、完全に消すことは出来ないぞ。あの娘は、徐々にお前のことを思い出すだろう」
「どうすれば……」
星南は頼の目の前に立ち、手を差し出した。その目には薄らと涙が浮かんでいる。
「私が力を貸してやる。頼が望むなら、あの娘の記憶を完全消去する協力をする」
頼は迷わずその手を掴んだ。星南は空いた手で涙を拭った。
二人は紫乃の部屋に行った。寝る前に泣いたのか、目元が赤く腫れている。
「……いいか?」
星南に小声で聞かれ、頷いて答える。
頼は紫乃の記憶を消した。
それが完了すると、頼は脱力したように座り込んだ。
「……紫乃……」
愛する者の名を口にし、手を握る。最後の力を振り絞り、紫乃の頬に手を添える。
空気を読んだ星南は、部屋から姿を消していた。
「君をたくさん傷つけてしまって、ごめん。愛してるよ」
そしてキスをすると、頼はそのまま消えてしまった。
初めて誰かを愛した。それは相手を愛しいと思うだけでなく、相手を思い出すだけで心が温まった。
その思い出はもう、相手にはない。
そう思うと、泣き叫ばずにはいられなかった。
◆
「生きてるか?」
目を開けると、星南がいた。木の根元で眠っていたらしい。
紫乃との出会いを夢見たせいか、星南を紫乃だと勘違いしそうになった。
「あの木の小僧に聞いた。また記憶を消そうとしているらしいな」
頼は黙ったまま首を縦に振る。
「今の頼の力では、完全に消すことは出来ないぞ。あの娘は、徐々にお前のことを思い出すだろう」
「どうすれば……」
星南は頼の目の前に立ち、手を差し出した。その目には薄らと涙が浮かんでいる。
「私が力を貸してやる。頼が望むなら、あの娘の記憶を完全消去する協力をする」
頼は迷わずその手を掴んだ。星南は空いた手で涙を拭った。
二人は紫乃の部屋に行った。寝る前に泣いたのか、目元が赤く腫れている。
「……いいか?」
星南に小声で聞かれ、頷いて答える。
頼は紫乃の記憶を消した。
それが完了すると、頼は脱力したように座り込んだ。
「……紫乃……」
愛する者の名を口にし、手を握る。最後の力を振り絞り、紫乃の頬に手を添える。
空気を読んだ星南は、部屋から姿を消していた。
「君をたくさん傷つけてしまって、ごめん。愛してるよ」
そしてキスをすると、頼はそのまま消えてしまった。