消えない茜色
「あ、いや!君を悲しませるつもりはなくて、えっと……ほら!誰でも、起きた瞬間に異性に顔を見られてたら驚くでしょ?」
彼は慌ててフォローするけれど、彼女は何も言わない。信じてもらえていないと感じ、言葉を重ねようとしたけれど、どんな言葉をかければいいのかわからなかった。
「僕、矢崎頼。君は?」
諦めて、自己紹介をした。唐突な流れに、彼女は戸惑う。
「……楠紫乃です」
紫乃は小声で返した。紫乃に答えてもらえたことが嬉しくて、頼は紫乃の手を取り、上下に振った。
「よろしくね!」
紫乃は頼の手から逃げようとするけど、思いのほかしっかりと握られていた。逃げるのは諦め、腕を伸ばして精一杯頼から離れる。
だけど、頼は一歩踏み出して紫乃との距離を縮めた。
「僕のことは頼って呼んでね!紫乃って呼んでもいい?」
頼の心の距離の詰め方は、紫乃にとっては苦痛だった。しかしそれをはっきりと言えず、自分が嫌になる。
「紫乃?」
頼に顔を覗きこまれて、紫乃は顔を背けた。空いていた右手で顔を隠す。
「……ごめんなさい……」
絞り出したような声だった。
紫乃を怖がらせていると気付いたのか、頼は紫乃から手を離した。その瞬間、紫乃は走って公園を出た。
彼は慌ててフォローするけれど、彼女は何も言わない。信じてもらえていないと感じ、言葉を重ねようとしたけれど、どんな言葉をかければいいのかわからなかった。
「僕、矢崎頼。君は?」
諦めて、自己紹介をした。唐突な流れに、彼女は戸惑う。
「……楠紫乃です」
紫乃は小声で返した。紫乃に答えてもらえたことが嬉しくて、頼は紫乃の手を取り、上下に振った。
「よろしくね!」
紫乃は頼の手から逃げようとするけど、思いのほかしっかりと握られていた。逃げるのは諦め、腕を伸ばして精一杯頼から離れる。
だけど、頼は一歩踏み出して紫乃との距離を縮めた。
「僕のことは頼って呼んでね!紫乃って呼んでもいい?」
頼の心の距離の詰め方は、紫乃にとっては苦痛だった。しかしそれをはっきりと言えず、自分が嫌になる。
「紫乃?」
頼に顔を覗きこまれて、紫乃は顔を背けた。空いていた右手で顔を隠す。
「……ごめんなさい……」
絞り出したような声だった。
紫乃を怖がらせていると気付いたのか、頼は紫乃から手を離した。その瞬間、紫乃は走って公園を出た。