消えない茜色
「紫乃……今まで聞かなかったけど……いつもどこに行っているの?」


有里は紫乃の質問には答えず、弱った声で質問を返した。


「どこって……」


紫乃は有里の様子を伺うように、高台に行っていることを伝えた。


「どうしてそんなところに行っていたの!?」


なぜか有里は怒りだしてしまい、紫乃はどうすればいいのかわからなくなった。あの高台に行ってはいけないと言われたことは一度もなかったため、怒られるとは思っていなかった。


「あそこが、なんだか……懐かしくて」


紫乃の声は小さく、震えていた。よく見れば手も震えていて、有里は自分が紫乃を怖がらせていることに気付いた。


「いや、ごめん。何もないならいいの。ただ……矢崎頼には、今後一切会わないで。苦しむ紫乃を見たくないの」


どうしてそんなふうに言うのかわからなかったし、有里が頼のことを知っているような口ぶりで、詳しく聞こうとしたけれど、口を開くよりも先に階段を下りて行っていってしまった。





「落ち込んでるのか?」


高台に戻ると、友人の真樹(まき)が木からぶら下がっていた。


「話しかけるなら、普通にしてくれる?」
「どうせ見えないんだから、問題ないだろ」


そう言いながら、真樹は地面に立つ。


「君に言われて紫乃の家に行ったけど、やっぱり間違いだったよ」
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