桜の咲く頃……… 君を想う
マンション前でタクシーを降り

彼女にも一緒に降りるように促した。

何の戸惑いもなく、素直に着いてくる彼女に不安を感じなくもないが。

今はそこを指摘するよりも

素直に着いてくる彼女の方がありがたいから、気にしないことにする。

部屋の前に到着し、ドアを開けて入るように促すと

「……………お邪魔します。」とキョロキョロ珍しそうに上がってきた。

マンションの入り口でも感じたが。

一人暮らしの男の家に

警戒心なく、ノコノコ上がってくることは………

彼女になった暁には、要注意だな。

ただ、ホントにここまで素直だということは………

男の影はないのだと嬉しく思う。

……………彼女を招き入れたは良いが………

スリッパがないことに、気がついた。

彼女じゃないけど………

俺も片思いが長く、女っけがない生活だったと改めて思う。

仕方なく俺のスリッパを差し出したが

大きいと感じたからか「履かなくても大丈夫だ」と笑っていた。

改めて見てみると………

先程歩幅も違ったが、足の大きさもかなり違うらしい。

普段、高校生と生活しているけど………

あくまで生徒としてだから、意識したことがなかった。

玲奈ちゃんや夏苗ちゃんは、つき合いも長く身近だが

それでも背の高さすら覚えてないし、気にしたこともない。

教え子だけど、彼女はやっぱり特別なんだなぁと

靴下でぱたぱた着いてくる足音を聞きながら感じた。
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