桜の咲く頃……… 君を想う
「懐かしい。」

涙も引っ込み、本の表紙を嬉しそうに眺めている。

裏返しにして、一番後ろのページを捲ると………

彼女と同じように、俺も1枚の写真を取り出した。

そうして、彼女の前に滑り込ませると。

「あっ!」と言って固まった。

そう、ここに写っているのは彼女なんだ。

「俺も…………
桜ちゃんと同じ事をしてたんだ。
恥ずかしいんだけど…………
オジサンの宝物です…………。」

俺の言葉に、大きな目をもっと見開き………こちらを見つめる。

この写真は、卒業式の後………

図書室で、俺の用意した花束を抱えて涙しているものだ。

教室を飛び出した彼女を心配して、追った夏苗ちゃんと玲奈ちゃん。

声をかけるのを躊躇うほど………

切なそうに花束を抱えて、泣いてる彼女。

その表情を、俺に見せたかったらしくて………

撮った1枚だ。

「因みに…………。
教師が、いくら友達に頼まれたからといって
危険を犯してまで………
教え子と一緒に、プライベートで遊園地なんて行かないよ。
それくらい………
俺も君の事が好きだったってこと!」

俺の言葉に、スッカリパニックを起こした彼女は…………。

いつもの、自分の世界に入ってしまった。
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