桜の咲く頃……… 君を想う
そんな彼女に、日頃のお礼が言いたいと思い

ある日テーブルの上にメモを置いてみた。

初めはさりげなく、業務用の内容で

『明日からは、受験の内申チェックの為
放課後は国語準備室で過ごす。』と書き

あくまで相手の為に書いたのではなく、自分のメモとして見せた。

その場にたたずみ、読んでいる気配がした。

その後立ち去る背中が、少し寂しそうに見えたので………

残念だと思ってもらえてたら良いなぁと、自分に都合良い想像をしていた。

たぶんこの頃、俺は恋に落ちていたんだと思う。




『ありがとう。』

『涼しくなってきたから、気をつけて。』

『美味しかったです。』と

その後は、俺の気持ちをメモに書いてみるようにした。

初めは読んで笑顔を見せるだけだった彼女も

日を追う毎に変化を見せ

俺のペンで『お仕事頑張って下さい。』と書き記してくれたり。

自分の筆箱を持参して

可愛らしいイラスト付きで『受験、合格しました。』と

嬉しい報告をしてくれた。

文化祭には、たこ焼きを焼きすぎたとメモ付きで

差し入れもあった。

とにかく日に日に近くに感じ

春人じゃないけど………

教師の自分でも恋をしても良い錯覚にとらわれた。
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