笑顔の行方
「彰人君の言いたいこと…………分かるよ。
でも、彰人君はちょっと間違ってる。
寧々は………
誰かのために努力するんじゃないもん。
………………この前、水族館に行ったんでしょ?
私の原点は、ここだったなぁって思い返したの。
家族の愛情が薄かった私に
沢山の大人が、楽しませようと一生懸命になってくれた。
その時も何となく嬉しかったけど……。
大きくなるにつれて、もっとそう思うようになったの。
それとね。
あの日の帰り…………パパと咲姉のマンションに寄ったでしょう?
眠ってたんだけど………。
昼間いっぱい冷たい物を食べたから、トイレに目が覚めたの。
リビングに、灯りが点いてたから
トイレに着いていってもらおうと覗いたら…………。
『寧々の指吸い』について、みんなが真剣に話してて。
『寧々が寂しい思いをしてないか?』
『お母さんが、恋しいんじゃないか?』
『ちゃんと見てやってなかった。』って…………。
子供でも、こんなに愛されてるんだってことは……理解できたよ。
あの時から、寧々のお母さんはママで………
みんなが家族なんだって思ったの。
私は………………。
何度も言うけど、みんなが大好きで大切なの。
いつか、みんなとお別れする日はくるだろうけど。
その日を1日でも延ばしたい。
その為には、みんなが元気でいてくれるように勉強したいんだ。
それに、3歳から恋をしている彰人君と………
やっと堂々と一緒に居られるんだよ!
結婚したら、お仕事ばかりじゃなくて
ゆっくり仲良く過ごしたいよ。
彰人君は、そうじゃないの?
後、友達に二人の事を内緒にしてるのは。
彰人君、学校でも人気なんだもん。
看護師さんの時みたいに、ヤキモチ妬きたくないから話してないの!
『会わせて』って、よく言われるんだよ!」
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