笑顔の行方
「ところで、明日の水族館は………」と

話題は明日の旅行に移った。

…………………どうせ寧々と二人で回れはしないだろうな。

あの水族館に初めて来た日と同じように

普段中々一緒にいられない兄貴達に、寧々は譲る事になる。

「寧々、明日の朝は先ず早起きして庭園を散歩しよう。
その後は……………」

ゲッ!

朝の散歩が始まり?!

そりゃ、滅多に1日中一緒にいられないが…………

どんだけ寧々を振り回すつもりだよ。

ウンザリしながら、目の前の料理に手を伸ばした。

海辺の旅館だけあって

魚介類が新鮮で上手い。

ここも魚が好きな寧々を考えて予約したのだろう。

俺の時には、地酒の上手いところを候補に入れてくれる。

結局この人達は

俺や寧々も家族なんだろう。

好きなこと、喜ぶことも全部把握して

俺達を中心に回してくれる。

悔しいが………

甘くて。

温かくて。

完敗なんだ。

明日帰る頃には…………

寧々の腕には大きなペンギンが抱かれているだろう。
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