笑顔の行方
「ちょっとおじさん。」

はぁ?!

おじさん!?

「ちょっと、将樹………彰人君!」

将樹?!

ハラハラする寧々を挟み

睨み合う俺と青年。

「寧々が困ること、分からないんですか?
寧々は、研修で来てるんですよ。」

そう、俺は寧々から研修だと聞いていた。

けど現実は、学校からの研修ではなく

個人的な勉強会としての研修だった。

「研修と言っても、個人的なものだろう。
もう十分やったはずだ。」

「これだから、素人は………。
貴方がどんな仕事をされているのかは、分かりませんが。
俺たちの相手は、人間なんですよ。
今日まで一生懸命関わってきたお年寄りと
『時間切れ~』と言って離れられないんですよ。
寧々の気持ちを考えたこと、あります?」

悔しいが、言いたいことは分かる。

「将樹、良いの!
私が、彰人君と帰るって決めたんだから。
けど彰人君。
私もキチンとお別れして、終わりにしたいから。
夕方まで待って。」

昨日電話した時、寧々は『彰人君と一緒にいたい。』と言った。

だから、一緒に帰ることだけを考えたが…………。

気を使う寧々のことだ。

もしかしたら、仕事を早く切り上げた俺に気を使って決めたのか?

コイツの存在に焦って

寧々を優先してなかったかもしれない。
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