笑顔の行方
「ちょっと、寧々来い。」

「だから、オッサン。
寧々のことを…………」

「君に寧々の気持ちを、教えてもらう必要はない。」

青年を無視して、寧々の手を引いた。



車に連れて行き

寧々の特等席に座るよう促した。

「寧々。」

「彰人君…………ごめんなさい。
あのね、さっきのは…………」

必死に話す寧々を見ていたら。

おばさんの家に引き取られて間もない頃

学校で、年の離れた母親の事をからかわれた時に

一生懸命誤魔化していた事を思い出した。

……………おばさんを傷つけないための、優しい嘘。

今回も…………俺の事を思って、やりたい事を我慢してる?

「ねぇ、彰人君………何処に行くの?
明日の朝も、早いんでしょ?」

「いいから、黙って座ってろ。
明日は、休みを取った。
心配するな。
それより寧々、この辺りにホテルはあるか?」

「えっ?」

「寧々が将来作りたい老人ホームの形が、ここなんだろう?
だったら俺も………
泊まってゆっくり見ておこうかと思って。」

そう言って微笑むと

今日1の笑顔を見せてくれた。

「…………彰人君、ありがとう。」

正直言うと、このまま連れて帰りたい。

アイツの言葉通りすることも腹が立つし

寧々とアイツが、親しくするのも面白くない。

…………………けど。

寧々が我慢してることを、アイツが気づいて突っかかるのは……

もっと面白くない。

子供みたいな言い分だが、アイツに負けたくないんだ。

それに………

やはり寧々を笑顔にするのは………自分じゃないと。

プライドの塊だと………

またおばさんに怒られるかな。
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