笑顔の行方
おばさんの親バカ対応と

俺の慌てっぷりに

それまであった、それぞれの緊張がやっと緩んだ。

言葉にはしないものの………

洋介夫婦も兄貴達も、生きた心地がしなかったはずだ。

それが証拠に。

一本のメールで

忙しい大人達が、一斉にこの病室に集まったんだから。

「………………心配かけて…………ごめんなさい。」

誰より人の心が分かる寧々なら………

この状況を見ただけで

自分のしたことの大きさに気づいているんだろう。

とっさに出来る人間がどれ程いるか分からない………偉業。

確かに、褒め称えるべき行動だが。

身内の……………

大切な命が…………

それによって、奪われたらと思うと………

やはり素直に、誉めてやれない。

それでもおばさんは………

『自慢の娘だ!』と、最高の誉め言葉を贈ってやれている。

ホント…………

さすがだ。

俺には、天地がひっくり返ったって………

言ってやれないもんなぁ。
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