笑顔の行方
「脈も安定してますし、もう安心でしょう。
一応もうしばらく入院して
家庭に帰ってからの生活環境について、話す必要がありますが。
1週間位の入院だと思って下さい。
明日からリハビリがあります。
後、食事の指導とアルコールの摂取の仕方について
専門医と栄養士から指導が入ります。
1週間、忙しいですけど頑張って下さいね。」

すっかりアル中扱いの医者に

『普段、酒は飲まないよ!』と言ってやりたいが。

アルコール中毒で命を落としかけたのは事実だし。

助けてもらった手前………

文句も言えない。

「ありがとうございました。」

俺の代わりに頭を下げて、医者を送り出してくれる寧々。

見た目は、彼女の方が入院患者のようだ。

「………………寧々…………ごめんな。」

頭に浮かぶのは

意識を失う前に見た、涙を溢しながら電話していた寧々の姿だ。

「…………………謝るのは………私の方だよ。
私のした行動で………………
彰人君を…………こんなになるまで………追いつめていたんだよね……。
ごめんなさい………。」

ベットに近づき、抱きついてくる。

「俺こそごめん。
寧々が居なくなる不安から、煽った酒で………
俺が居なくなる不安を………寧々にさせてしまったな。
二人して………何やってるんだろうな。」

…………………ほんとに、アホみたいだ。

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