笑顔の行方
検温と脈を計り、心電図を外して出ていった看護師さん。

その間、部屋の一番隅で立ち尽くしていた寧々が

ドアを開けて一歩踏み出した途端駆け寄り

「彰人君!」と………。

「何?」

言いたいことは、色々あるんだろうけど。

目が合い、俺の口に目がいった途端

真っ赤になってうつ向き、何も言えなくなった。

可愛い奴。

「遠慮することなく、俺の彼女だって言っていいんだよ。
分かった?」

そう言って、もう一度顔を上げさせて

今度は二人だけの、恋人同士のキスをした。

「さっきのは、寧々の真似をしたカウントされないキスね。
見せびらかしたキスが、ファーストキスじゃ
寧々だって嫌だろう?
だから、これがホントのファーストキス!」

もう一度チュッとして、寧々を離すと

ポスンとイスに座り込んだ。

「今初めて…………年の差を感じた……………。」

クスクス笑う俺をひと睨みして。

「これで、寧々は彰人君のものだからね!
勝手に遠ざけたりしないでよ。」と生意気なことを言っていた。

「あぁ、約束する。
なんたって、寧々は俺の婚約者だからな。」

「ホント??
ホントにそれで良いの!?」

疑り深い彼女に

「信じれないなら、もう一回キスしとく?」と言ってやる。

確かに、年の差を感じるな。

少なくとも今の発言は、同じ年頃の彼氏だとしないだろう。

手放さないと決めたこの日が、ファーストキスか。

ある意味、忘れられない記念日だな。
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