笑顔の行方
「寧々、キスだけって言うけど。
この間のキスは、ホントのキスじゃないって………分かってる?」

「えっ?」

さもびっくりしたような目で、俺を見つめる。

「だったら、今からもっと大人のキスをするから。
それでも、住めると思うなら一緒に過ごそう。
じゃあ、目を瞑って。」

俺の言葉に、注射を待つような顔をする。

プッ。

これじゃ、ムードもなにもない。

「寧々…………。」

顔の横に手を這わせ、上を向かせる。

震える唇が可愛い。

チュッ。

チュッ、チュッ。

短いキスを何度かすると、寧々の表情がゆるんできた。

少し長めのキスの後

ソッと舌を入れると…………

「ダメ!」と言って、胸を強く押された。

「ごめんなさい、彰人君。
でも………やっぱり無理。」

さっきと同じようにポロポロ涙を溢す寧々は

まだまだ大人のキスは不似合いだ。

「だから言ったろう?
寧々はにはまだ早いって。」

余程怖かったのか、しがみついて泣きじゃくる。

「ごめんなさい。
ごめんなさい、彰人君。
嫌じゃないの………ただ、びっくりして。
嫌いにならないで!!」

どうやら、行為にも驚いて怖がらせたみたいだが。

それ以上に、拒否して嫌われる事が怖いらしい。
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