笑顔の行方
「嫌、あってる。
違わない。
寧々が言う通り、一瞬トラウマに襲われたけど……。
みんなが大好きで大切なことを
ちゃんと思い出した。
それに…………俺には、寧々がいることを。
お袋に、いつか逢った時。
自慢できる嫁と仲間に囲まれて、幸せだったって報告出来るよう
精一杯生きるよ。
…………………ごめんな、心配かけて。
寧々の察し通り、俺のお袋は3歳の時に俺の目の前で死んだんだ。
今なら、救急車を呼ぶなり助ける方法があったんだろうけど。
3歳の子供は、泣くことしか出来なくて………。
仕方ないとは解ってても、何処かで自分を責めてたんだろうな。
その後は、寧々も居たような施設に引き取られた。
慣れない間に、親父が迎えに来て。
その時お袋は、何処かの墓に入れられた。
お袋とはそこで終わらされたことも………トラウマなのかもな。
兄貴達の母親は本妻で
俺は、浮気相手の子供だから……愛される訳はなかった。
それでも兄貴は、俺を庇って家も出てくれた。
おばさんには、申し訳ない思いで………恨みはないが。
親父には、許せない思いがある。
それも、兄貴達が親父を会社から追い出し
俺を引き入れてくれた時に、溜飲したけど。
あの時トラウマが出たのは…………
寧々を失うと思ったからだ。
兄貴達や周りの人達が、家庭を持って離れても
寂しいとは思っても、失う怖さはなかったのにな。
寧々のいない人生は、考えられないよ。
…………………って、恥ずかしいな。」
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