笑顔の行方
「彰人君、車を駐車場に停める前に
寧々を先に降ろしてもらって良い?
彰人君が来るって内緒にしてるから、驚かそうと思って。
彰人君が来るのって、久しぶりでしょ。
びっくりすると思うから。
寧々がメールしたら、入って来てね!」

いたずらっ子の顔をする寧々。

一見すると、兄貴達を驚かせるという嘘を信じそうだが。

長年寧々と一緒にいる俺には、そんな嘘は通じない。

たぶん今日は、俺の誕生日祝いだ。

玄関を開けると………

パァ~ン!!とうるさいクラッカーで出迎えるつもりだろう。

兄貴と咲だけだと良いけど…………。

他のメンバーもいそうだ。

はぁ~っ。

大袈裟に驚くとか、喜ぶというのが苦手な俺には

少し気が重いバースデーだ。

寧々と二人の祝いで、十分なんだけどなぁ。

これからの時間に滅入りながら、車を停めた。
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