極道の義娘は失声症
頭がクラクラする
(ー?)
私は訳がわからないまま着物に着替えた
外に出ると傘下の皆が居る
「「おはようございます!!姫!」」
私は挨拶の返事をしようと前に一歩出た

ぐらつく視界
ーーーーガタタンッ…!
「「姫!?姫っ!」」
身体も目蓋も重くて怠い
「ーゲホッ」
「おい,若達を呼べ」
私の身体が不意に浮く
(誰…!?)
私は誰かわからない胸板を弱い力で押す
「安心せぇ,敵じゃ無いけぇ」
(…ー)
意識を失っても身体が揺れる感覚はした



儂が廊下を歩いていると何か騒いでいる
(何じゃ,煩いのぅ)
儂はさっき此処の若頭と話をしていた
内容は娘の話じゃ
(そんなに良い女やったら一度見たいのぅ)
なんて思っていると
「「姫!?姫っ!」」
と傘下達が慌てていた
儂が近付くと倒れている女が一人
(ー!?)
「おい,若達を呼べ」
儂が抱き抱えるとそいつは弱い力で儂の胸板を押す
(銀髪にええ女じゃの)
「安心せぇ,敵じゃ無いけぇ」
そう言うと女は意識を無くした
儂は静かに歩き,走って来る若頭に一礼する
「湊!」
(ほぉ,この女が…)
「さっき倒れたんじゃぁ」
儂の腕の中で眠る湊を見て若頭は青冷める
(湊と言うんじゃな)
「ど,どうしましょう…」
儂は溜息を吐き
「儂が呼ぶけぇ」
と言うと若頭は首を横に振る
「湊は私の子よ,私がするわ」
その顔は親の顔だった
「なら儂はこいつを運ぶけぇの」
「えぇ!」
(面白い女じゃ)
儂は湊の頬を少し撫でる
すると
「ー…?」
目を開いた湊の左右の瞳はとても鮮やかな赤と青
(美しい………)
素直にそう思った

?完

目を覚ますと男の人が目に映った
少し固まっている
キョロキョロすると玲華さんが居た
「ー!ー!」
私が暴れると彼は私を強く抱き上げる
「ー!?」
不意に感じる力強さに彼の首に抱き付く
彼はどこか嬉しそうだ
ぐらっとして頭を抑えると彼が優しく頬を撫でる
「ほらみぃ,熱が上がるじゃろ」
(ー…冷たい)
スリッと無意識にその手に擦り寄り目を閉じた

玲華さんの声がして目を開く
「湊!大丈夫なの?」
私がノートに書こうとすると
玲華さんの手が私の額に付けられる
「熱いわねぇ」
「ー………」
私が玲華さんと話をしていたら抱き上げている彼に引き寄せられた
「この女貰うけぇ」
玲華さんが困ったように
「あんたも?全く………」
と言った
「ケホッ」
私が咳をすると二人は慌て私を布団に乗せる
「ー…」
静かに診察をしてもらう
「風邪ですね」
そう言い私の頭を撫でる医師
「風邪…」
「ほ………」
仁さんと玲華さんが安心していた
私はキョトンとする
ー彼は誰ですか?
ノートを見せる
「こいつ?こいつー」
「円頓寺帝じゃけぇ」
私は一礼した
ーありがとうございます
そう微笑む
(((天使………)))
「ー?」
3人が天を仰ぐ
もう慣れた
「何か食べたいものある?」
ー林檎
「分かったわ」
切なそうに頷く玲華さん
私は申し訳ない
「良いのよ?ただ私がしっかりしないとね!」
「ー………」
そんなに無理しないでほしい
私のせいで………
「…」
「我慢せんでえぇんじゃけぇ」
私の頭に乗る温かい手
私が顔を上げると円頓寺さん
「ー?」
不思議そうにすると
「無視しなくてええんじゃ」
と言われた
「ー!」
私の目が見開く
こんなに優しい目を久々に見た
まるで玲華さん達のよう
「ー」
私は微笑みその手を握る
夢の中へ行く時もずっと握っていた
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