朝いちばんの君。
教室。
私は荷物をまとめ、すぐに帰ろうとした。
でもそれは出来なかった。
小林さんが玄関で待っていたから。
「なに?」
少し冷たい口調で睨んだ。
小林さんは、今にも泣きそうだ。
「佐々木さん、佐山くんのこと好きだったの?」
さっき、聞いてたくせに。
「うん。でももう振られたから。」
すると、急に頭を下げてきた。
「ごめんなさいっ。」
え?なんで…
「私、そんなこと知らなくて。
佐々木さんに無神経なことしまって。
佐々木さんすごく傷ついた顔してるから」
「もう、いいよ。」
終わった話だし。
「佐々木さん…でも私……」
「もう、いいって。」
本当にもういいと思った。
2人はお似合いだよ。
____「私、佐山くんと別れる。」
小林さんは呟くように言った。
は?????
「なんで?」
…そんなこと言うの。
「佐山くん、佐々木さんのことばっかり話すの。今日もそうだった。
それに、佐々木さん可愛いし、お似合いだなって思って見てた。それなのに私なんかが…」
わたしなんかって。。。
…………ふざけないでよ。
バチンッ
気づいたら、
小林さんをビンタしていた。
「…そんなこと…………
………そんなこと言わないでよ!」
小林さんは驚いた目で私を見た。
私、なんか、悪いことしましたかって
そういう顔が私をイライラさせる。
「あいつさ、あんたと話してる時だけ顔赤い
の。カノジョできたかもってすっごい嬉しそ
うに話してたよ。あんたが入ってこなくて
もあたし、振られてた。
あたしの話すんのは
あんたと話すのに緊張してるからだよ!
いい加減気づきなよ、
あいつの気持ちはあんたに向いてるんだよ!」
感情が溢れ出す。
佐山と話した日々。
あいつのおかげで私は変わった。
ゲームをしない休み時間。
げらげら笑って。涙が出るほど笑って。。。
楽しかった。
楽しかったからこそ、
しょうがないと思った。
小林さんと喋ってる時のあの顔を見たら…
あの顔にさせれるのは
小林さんしかいないのに………
それなのに……っ
もう一度ビンタしようと
手を振り上げた時だった。
「おいっ、何してんだよっ!!?!」
佐山が私の腕を掴んだ。
力がこもった手。
その手は少し震えていた。
「お前、殴ったの。小林のこと。」
「うん。殴った。」
「なんで。」
佐山は今まで見たことない、怒ったような
泣いてるような、絶望したような
変な顔をしていた。
「ムカついたから。」
「ふざけんなよ!!!!」
佐山が怒鳴った。
「俺に告ったり、小林殴ったり、何したいの、嫉妬?小林が俺の彼女だから殴ったの?」
小林さんがなにか言いたそうにしてたけど、
先をこされると面倒なので、
「そーだよ。」
そう言った。
「小林さんのこと
前から嫌いだったんだよね。
……ってか、
佐山のことが好きとかありえないし。
さっきの嘘だから。
もう、関わらないで。」
最後の言葉は、若干震えていた。
あーだめ。
また涙でる。
「こっちから願い下げだよ。
佐々木のこと
友達だと思ってたけど、
最低なやつだったんだな。」
佐山から浴びせられる言葉が
グサリと心に突き刺さる。
辛い、辛いよ。
「もういい。小林、帰ろーぜ。」
佐山は小林さんの手を引っ張って
帰って行った。名残惜しそうにした小林さん
の顔が頭に残った。
___悪者。
私は主人公の女の子を邪魔する、
悪のヒロイン。
悪のヒロインなのに、
どうしてこう、
涙が出るのだろう。
くらくらして、
下駄箱にもたれかかろうとしたら、
屋上の彼が居た。
_「頑張ったね。君。」
「うん。…グスッ」
「俺は見てたよ、頑張ってたとこ。
悪いやつだなんて思わないけど。」
今まで溜めてた涙が
溢れんばかりにどばどばと流れ落ちて、
声をあげて泣いた。
彼はそっと私の頭を撫でた。
すごく優しい顔だった。
泣いてばかりの私。
彼のそばにいるとそんな私でさえも
居て良いんだなと思った。