最初で最後の愛の話

僕は周りに構わず小説を書き続ける。今書いているのは、記憶喪失になった少年の話だ。不思議な世界を仲間とともに冒険し、本当の自分を取り戻していくというストーリー。

「ねえ、何してるの？」

スマホを触り続ける僕に、誰かが話しかけてくる。顔を上げれば、長い黒髪をポニーテールにした女子だった。顔立ちはこのクラスの中で一番華やかだろう。

「小説を書いてるんだ。趣味で」

無愛想に僕はそう言ったが、女子生徒は「すごいね！私、そんな才能ないよ」と無邪気に笑う。

「あたしは花山愛！××中学校出身。よろしくね」

「僕は、相原ミコト。よろしく」

透以外の人とこのクラスで初めて喋った。花山さんは素敵な笑顔を僕に向け、また誰かに話しかけに行く。フレンドリーな性格のようだ。僕とは違う。

そして、担任の先生が教室にやって来て、自己紹介が終わった後に早速クラスの室長や委員会を決めることになった。

僕は図書委員に手を挙げた。すると、僕以外にも三人が手を挙げた。そのうちの一人は花山さん。しかし、図書委員は二人しかなれない。