最初で最後の愛の話
それだけでも大きな仕事なのに、花山さんは「あたしも接客する」と言ったんだ。怪我をしている状態で……。

「歩けないわけじゃないから!!」

僕やクラスメートたちの説得を聞かず、花山さんはカフェでお客さんをおもてなしした。辛そうな表情は一切見せず、笑顔で接客をする。その仕事ぶりは怪我をしていない僕らよりよくできている。

「お疲れ様!!」

文化祭が終わるまで、花山さんはずっと笑顔だった。僕はますます彼女から目が離せなくなっていったんだ。



文化祭が終わると、学校行事といえばテスト以外はなくなる。花山さんが無理しなくてもいい。僕は少しホッとしていた。

そんなある日のこと。今日は図書委員の仕事がある日だった。オススメの本を何冊か選び、図書館前に展示しておく日だ。展示する本は、図書委員の二人で話し合って決める。

花山さんの本を選ぶセンスはいい。すぐにその本は借りられる。高校生が読みたがる本を、いつも花山さんは的確に選んでいた。僕も見習わないと。
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