最初で最後の愛の話
「あれ……?」

僕の席は、花山さんの後ろ姿が見える位置にある。友達と話す花山さんがどこか具合が悪そうに見えた。それを笑顔で誤魔化し、話している。

「無理してるんだ……」

ずっと見ていたからわかる。元気がない素振りを一切見せず、放課後になると僕に「行こう」と笑いかけた。

「花山さん、もう今日は帰った方がいいよ。花山さん、朝から具合が悪そうだし」

僕がそう言っても、「平気だよ」と花山さんは笑う。花山さんの口癖だ。そして無理やり話を終わらせるかのように僕の手を引っ張った。

「早く選んで帰ろう?今日はほら、雪も降ってるし」

図書館の窓の外には、いつから降り始めたのか雪が舞っている。花山さんはどこか嬉しそうだ。

「積もらないかな〜?雪が登場する本を置こうかな〜」

一人で頑張り続けるその姿を見て、僕はもう黙っていられなかった。足が自然と動く。

「無理に頑張らないで!!」

怒ったような口調になってしまう。花山さんの手を掴み、片手で花山さんのおでこに触れた。熱い。熱がやっぱりある。
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