梅咲君にはツノがある ~私、節王様と結婚します!~
 それだけじゃない。

 その梅の木は、まるでダイヤモンドのパウダーを纏っているみたいにキラキラと光っているのだ。

 私はそのただならぬ光景に息を潜め、こっそりと近付いた。

 けれど、光る梅の木などはまだ序の口だった。

 側の物置小屋に隠れて光る梅の木をしばらく眺めていると、さらにあり得ないものを見てしまったのだ。

 幹がひときわ明るく光り、その眩しさに顔をそむけた私が次に目にしたものは、平安装束に少し似たファンタジーすぎる恰好の梅咲君だった。

 光の中からゆっくりと現れた梅咲君は、浮遊する羽衣をなびかせた天女風の女性を何人も従えて、それはもう、息を呑む別世界の人。

 梅咲君が梅の木のほうに向き直ってすう、と手を伸ばすと、従者たちが膝を折って深々とお辞儀をし、光の中へと還っていった。
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