後輩くんは溺愛を隠せない
タダで旅行できるなんて、滅多にない機会だ。
それに、この季節は暑くもなく寒くもなく、気温もちょうどいい。
「おう、行くのは1週間後、準備頼むな」
これまた、随分急なーー、よく1週間後に部屋が取れたものだ......。
普通ならこれから宿にアポを取るのに、やることが早い......。
伝える事を全て伝え終えたらしい部長は、上機嫌のまま仕事に戻っていった。
「夏樹くん、1週間後に出張決まったから準備しておいてね」
デスクに戻り、作業をしていた夏樹くんにそう言った。
「出張......ですか?分かりました!」
「ちなみに、一泊するから」
泊まる準備をしないとなので、忘れずに付け加えておく。
「ーー紗知先輩とお泊まり......出張最高!」
「ちょっ!あくまで仕事だからね」
さっきまで、私も泊まれることに喜んでいたけれど、夏樹くんの喜びはなんだか違う気がする。
夏樹くんなら、仕事中まではしゃぐなんてことはしないと思うけれど、鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だったので一応釘を刺しておいた。