後輩くんは溺愛を隠せない
「これがいいかしら......?」
そう言って、手に取ったのは私の中でもおすすめの宿だ。
値段も手頃で、あまり知られていない穴場なのでそこまで混んでいることも無い。
「あぁ、いいんじゃないか?」
奥様の提案に、ご主人もそう頷いた。
「そちらの宿は、晴れた日には窓から満天の星空を見ることもできるんですよ~。
のんびり過ごすにはピッタリです!」
「柏木さんがそう言ってくれるなら、ここにしようか」
「ありがとうございます。それでは詳しくご説明しても宜しいでしょうか?」
すぐに決まってよかった。
目の前の佐藤様夫婦も、楽しみだと頷いている。
ただーー隣で座っている夏樹くんは、何か言いたげな顔をしていた。
今はお客様の手前、聞いてあげることは出来ない。
夏樹くんもそれがわかっているのか、直ぐに顔を笑顔に戻して、黙って私の説明を聞きながら仕事を見ていた。
ーー話もまとまり、最終段階に入る。