後輩くんは溺愛を隠せない
「へ、部屋に戻ろうか」
最後のひと口を飲んで、なんとも言えない空気を遮ったのは私だった。
「......そうですね!」
夏樹くんは静かな雰囲気のまま立ち上がって、2人で空の瓶を片付けてから並んで部屋に戻る。
廊下を歩いている時は隣に並んでは居たけれど、夏樹くんは何故か、私と一定の距離を開けていた。
いつもよりも距離が遠く感じるーー。
手を繋いだこともあるし、手が触れそうな距離で並んで歩いたこともある。
だからこそ、夏樹くんのその行動が少し寂しく感じた。
部屋に戻り、ドアを開けると目の前に布団が用意されていた。
それも、隣同士でくっついている。
「っ!?」
ここで寝るの?
この距離で、隣同士で寝るのは勇気がいる。
それこそ、私のドキドキが伝わってしまいそうだ。
「俺、先に寝ますね。紗知先輩どっちがいいですか?」
「ど、どっちでも......」
「分かりました。じゃあ、俺はこっちで」