後輩くんは溺愛を隠せない


何食わぬ顔で、向かって左に敷いてある布団にスタスタと入っていく夏樹くん。


えっ、ちょっと待って、なんでそんなに冷静でいられるの?ーー私はプチパニックだ。


部屋の入口で突っ立ったまま、私は動けないでいる。


どうしよう。このまま布団に入るべき?それとも布団を少し離す?


夏樹くんが動かさないでそのままにしてるって事は、すぐ隣に居ても嫌じゃないという事だろう。


後はーー、私の心臓がもつかどうか。


すでに倍速で脈打っているため、寝るに寝れない。


布団を離して、何事も無かったかのように寝るべきと思っている私と、好きならこの状況に甘えちゃえと思っている私。


どちらにするべきか頭の中で葛藤していた。



「よし......」



小声で気合を入れて、足を室内に進める。


たった数歩でたどり着いてしまう目的地に、一歩一歩進む度、ドクンドクンーーと、足の先から頭のてっぺんまでが震えた。


恐る恐る、夏樹くんの居ない布団に潜り込む。

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